社会人にとって、名刺は必要不可欠なアイテムです。自分の情報が記載された名刺は、それ1枚で自己紹介を完了させられるだけでなく、デザイン次第で相手に大きなインパクトを与えられます。
そんな名刺を作る際に議論になりがちなのが、名刺を縦書きで記載するか、横書きで記載するかです。どちらを選んでも問題ないように思われますが、実はそれぞれ違ったメリットがあります。
今回は、縦型名刺のデザインを考える際に、縦書きと横書きのどちらを選べばよいのか、それぞれどのような業種に向いているのか、ご紹介いたしましょう。
縦型×縦書き名刺の場合
それでは、最初に縦型のデザインの名刺に、縦書きで情報を記載するメリットやデメリットについて取り上げます。昔から存在しているオーソドックスなデザインの名刺ですが、どのような特徴があるのか、ひとつずつ確認していきましょう。
メリット
縦書きの名刺のメリットは、なんといっても目立つことでしょう。京都の舞妓さんや芸妓さんたちが使用している花名刺は、現在でも縦型×縦書きが主流ですが、それ以外は横型×横書きの名刺を使用している人がほとんどです。
現在では使っている人が少数派だからこそ、名刺交換の時点で、相手に強い印象を与えられます。
そして縦型×縦書きの名刺は、伝統的な名刺の形式なので、相手に知的で誠実、そして落ち着いた印象を与えたいときに最適です。
日本語は本来縦書き表記が基本なので、日本語との親和性も高く、毛筆などの和風フォントと合わせると、まとまった印象の名刺を作成できます。
また、縦書きはシニア世代の人にとって、読みやすい形式の名刺です。会社の役員や社長のなかには年配の人も多いので、相手に配慮した表記を考えるなら、採用する価値は十分あります。
デメリット
縦書き名刺のデメリットは、デザインのレパートリーが少ないことでしょう。現在使用されている名刺の71%は横型で、縦型の名刺の使用割合は3割弱の29%です。そのため、需要が低い縦型名刺の形や表記スタイルは、必然的に限られてしまいます。
デザインが少ないと、文字や画像の配置がどうしてもワンパターンになりがちです。横書きであれば社名を最初に持ってくるなど、さまざまな記載順を選択できるので、レイアウトに幅が生まれますが、縦書きで同様のレイアウトを行うのは簡単ではありません。
また、住所やメールアドレスを記載する際、縦書きでは文字が収まらない可能性もあります。住所は改行箇所を工夫すれば問題ありませんが、メールアドレスの場合はできるだけ改行は避けたいところです。
デザインするときのコツ
すでに言及しているように、縦書きの名刺は記載できる文字数が限られています。そのため、デザインを考える際は、できるだけシンプルにまとめる意識を持ちましょう。
たとえば、最近では名刺に名前や住所、電話番号以外にホームページのURLやSNSのアカウントまで載せている人も少なくありません。
ですが、縦書きではそれらの情報すべてを載せられませんし、何より文字数が多いと、美しいとは言いがたいデザインになってしまいます。
縦書きの場合は、記載する情報の取捨選択を事前に行いましょう。また、縦書きと日本語の相性のよさを活かすのであれば、毛筆以外にも明朝体系のフォントを使用するのもおすすめです。
こんな業種におすすめ
縦書きの名刺は、19世紀初頭の江戸時代から使用され続けている、伝統的な日本の名刺のデザインです。そして受け取り手に対して堅実、かつスマートな印象を与える効果があります。
そのため、医療関係や学校関係の仕事に従事している方など、仕事相手に対して誠実な印象を与えたい職種、業種の人におすすめです。
また伝統的なスタイルなので、会社の社長や役員、和の雰囲気を大切にしている老舗に勤めている方も、十分縦書きの名刺を採用する価値があります。
縦型×横書き名刺の場合
続いて、縦型のデザインの名刺に、横書きで情報を記載するメリットやデメリットについて取り上げます。日本の歴史ある縦型の名刺と横書きが合わさることで、どのような効果が生まれるのか、一緒にみていきましょう。
メリット
現在名刺のほとんどは、横書きで記載されるようになっていますが、その主な理由はアルファベットを使用する機会が増えたからです。
メールアドレスやホームページ、SNSのIDなどはアルファベットで表記されており、縦書きで表記するのも不可能ではありませんが、違和感は拭えません。正確にアルファベットの羅列の意味を相手に伝えるのであれば、横書きを採用するのがベストです。
また、横書きを採用することで、縦型×縦書きの名刺の堅苦しい印象を和らげる効果も期待できます。手渡しもしやすく、受け取る側も見慣れている横書き表記なので、読みやすいでしょう。
そして、縦型の名刺には縦書きという、従来の認識から外れたデザインを採用することで、相手に大きなインパクトを与えられます。特別感を演出したいのであれば、もってこいのデザインです。
デメリット
縦型×横書きの名刺のデメリットは、縦型×縦書きの名刺以上にデザインの幅が狭まってしまう点です。せっかく個性的な名刺を採用するのに、そもそも選べるレイアウトや形式が限られてしまっては意味がありません。
縦型×縦書きの名刺を作成する際は、既存の印刷業者に頼むのではなく、自分で作成することも検討した方がよいでしょう。
また、縦型の名刺は左右の幅が狭いです。そのため、記載しやすくなったはずのホームページのURLやメールアドレスを、複数行で表記しなければならない可能性があります。その場合、読み手に正確に情報を伝えられないおそれもあるので、注意が必要です。
デザインするときのコツ
縦型×横書きの名刺は個性的ゆえに、デザインを考える際に気にすべきポイントが多いです。伝統的な形式と革新的な形式を掛け合わせているだけに、一歩間違えると全体のバランスが崩壊する可能性があります。
たとえば、名刺に採用する文字のフォントの選定をする場合、明朝体を採用するのは避けるのが無難です。縦書きであれば親和性の高い書体なのですが、横書きで採用すると、全体的に違和感を抱かせる仕上がりになります。
こうした場合は、ゴシック体など、読みやすさを重視したフォントを選ぶとよいでしょう。
また、文字の大きさも重要です。デメリットの項目でも言及しましたが、縦型×横書きの名刺は横幅が狭い分、複数行で文字列を表記しなければならない可能性があります。
その際は、文字の大きさを調整すれば、メールアドレスなどを1行にまとめて記載できるでしょう。
こんな業種におすすめ
縦型×横書きの名刺はインパクトのあるデザインなので、名刺を受け取る相手に対してファッショナブルさや、個性をアピールしたい方に向いています。そのため、デザイナーやイラストレーターなど、クリエイティブ系の仕事をしている方におすすめです。
クリエイターであれば、名刺を自分で作成することでデザインの幅が狭いという問題も解決できます。また、名刺そのものが自分のポートフォリオとしての役割も担ってくれるので、名刺交換の時点で相手に自分の力量を伝えることも可能です。
まとめ
以上、縦型名刺の縦書きと横書きのメリットとデメリット、そしてそれぞれのデザインが向いている業種についてご紹介してきました。
名刺交換の際に重要なのは、相手の記憶に残ることです。そのため、一般に出回っている横型の形式ではなく、縦型の形式を採用するのは大きな意味があります。
そして、表記方法についてもそれぞれ利点もあれば不利な点もあるので、名刺を作成する際はどのような効果を名刺に求めているのか、事前に考えておきましょう。目的がはっきりしていれば、選択肢は必然的に絞れます。
現在ではマイノリティゆえに、縦型形式の名刺を作成する場合は、レイアウト含めてさまざまな課題があるでしょう。しかし、完成させたときの達成感、喜びは大きいはずです。興味のある方は、ぜひ自分だけの名刺作りに取り組んでみましょう。