近年、企業の環境配慮やSDGs対応が重要視されるなか、再生紙への関心が高まっています。しかし、実際に導入を検討する際には「そもそも再生紙とは何なのか」「従来の紙と何が違うのか」といった基本的な疑問から、コストや品質面での不安まで、さまざまな課題があるのではないでしょうか。
本記事では、再生紙の定義や特徴から始まり、メリット・デメリット、製造工程、そして環境への影響まで詳しく解説します。
目次
再生紙とは?
再生紙とは、新聞や雑誌、チラシ、ダンボールなどの古紙を原料として製造された紙のことです。使用済みの紙を回収し、繊維状にほぐしてから再度漉き直すことで、新たな紙として生まれ変わらせたものを指します。
現在の日本では、古紙の配合率について明確な規定がないため、わずかでも古紙が混入していれば「再生紙」と呼ぶことができます。ただし、古紙の配合率が高いほど、インクなどの不純物の影響で紙に色味がつく傾向があります。
再生紙は、本来廃棄物として処理されるはずの古紙を有効活用することで、資源の循環利用を実現する製品です。そのため、国や地方自治体、多くの企業で積極的な利用が推奨されています。
再生紙を使用した製品の例
再生紙は身の回りで幅広く使用されています。もっとも身近な例として、新聞紙が挙げられます。
そのほかにも、トイレットペーパーやティッシュペーパー、タオルペーパーなどの衛生用品、ダンボールや包装紙といった梱包材料、コピー用紙やノートなどのオフィス用品にも再生紙が使われています。
また、官公庁や地方自治体の文書や広報誌、学校の教科書や副教材なども再生紙の利用が進んでいます。
平安時代にはすでに再生紙が作られていた!
実は、日本における再生紙の歴史は非常に古く、その始まりは平安時代にまでさかのぼります。当時、紙は非常に高価な品物であったため、貴族たちは和歌や書に使用した後の紙を大切に保管し「古紙の漉き返し」という技法でリサイクルしていました。
この技法によって作られた再生和紙は「薄墨紙」と呼ばれ、独特の風合いで愛用されていました。
江戸時代に入ると紙の生産量が増加し、庶民の間にも紙が普及しました。この頃には「紙屑屋」という職業が現れ、使用済みの古紙を集めて古紙問屋に売り、そこから漉き返し業者へと渡される現代のリサイクルシステムに近い仕組みが確立されていました。
つまり、日本では古くから資源を無駄にしない文化が根付いており、現代の再生紙は伝統的な知恵を現代技術で発展させたものと言えるでしょう。
再生紙とエコ用紙・古紙の違い
再生紙と混同されがちな用語に「エコ用紙」と「古紙」があります。これらの違いを正確に理解することで、環境配慮型の紙製品について適切な判断ができるようになります。
再生紙とエコ用紙の違い
エコ用紙は、環境負荷を軽減することを目的として製造された紙の総称です。再生紙もエコ用紙の一種ですが、エコ用紙にはその他にも様々な種類があります。
再生紙が「古紙をリサイクルした紙」であるのに対し、エコ用紙は「環境配慮の観点から作られた紙全般」を指すため、より幅広い概念となります。
非木材紙
非木材紙は、木材以外の植物繊維を原料として製造される紙です。竹やケナフ、綿などの繊維が使用され、木材の使用量を削減することで森林保護に貢献します。成長が早い植物を原料とすることで、持続可能な紙の生産を実現しています。
シリアルペーパー
シリアルペーパーは、おからやとうもろこしの皮などを原料として製造される紙です。本来は農業廃棄物として処理される部分を有効活用することで、廃棄物の削減と新たな資源の創出を同時に実現しています。
間伐材紙
間伐材紙は、森林の健全な育成のために伐採された間伐材を原料として製造される紙です。森林の成長過程で必要となる間伐作業で得られる木材を活用することで、森林の適切な管理と資源の有効利用を両立させています。
再生紙と古紙の違い
古紙は「一度使用された後に回収される紙」のことです。一方、再生紙は「古紙を原料として製造された紙製品」のことを指します。
古紙には新聞紙、雑誌、ダンボール、オフィス用紙などさまざまな種類があり、それぞれ品質や特性が異なります。これらの古紙を分別・回収し、適切な処理を経て新たな紙製品として生まれ変わったものが再生紙です。
再生紙のメリット
再生紙の使用には、環境面と経営面の両方で多くのメリットがあります。
資源の有効活用ができる
再生紙の最大のメリットは、本来廃棄物となる古紙を有効活用できることです。日本では、年間約2,200万トンの古紙が回収されています。この膨大な量の古紙を再生紙の原料として活用することで、限りある資源を循環利用できます。
また、企業にとっては、廃棄物として処理コストがかかっていた古紙が、価値ある資源として再利用されることになります。さらに、資源の有効活用は、単に環境によいだけでなく、企業の社会的責任(CSR)の観点からも重要な取り組みとなります。
森林資源を保護できる
紙の原料となるパルプを製造するためには、大量の木材が必要です。再生紙を使用することで、新たに伐採される木材の量を削減し、森林資源の保護に直接的に貢献できます。
日本の古紙利用率は約64%に達しており、これは新たに投入される木材パルプの量を大幅に削減していることを意味します。仮に古紙をまったく利用しなかった場合、現在の約1.6倍の木材が必要になると推計されています。
森林は二酸化炭素を吸収し、酸素を供給する重要な役割を担っています。また、生物多様性の保全や水源の涵養など、多面的な環境機能を持っています。再生紙の利用により、これらの貴重な森林生態系を保護することができます。
出典:公益財団法人古紙再生促進センター(http://www.prpc.or.jp/wp-content/uploads/To_protect_the_quality_Recovered_paper.pdf)
企業のイメージアップにつながる
環境配慮への取り組みが企業評価の重要な要素となる現代において、再生紙の利用は企業イメージの向上に大きく貢献します。取引先や顧客、従業員に対して、環境問題に真剣に取り組む姿勢を具体的に示すことができます。
とくに名刺や封筒、カタログなどの印刷物に再生紙を使用することで、相手方に環境配慮の意識を直接的にアピールできます。近年では、環境配慮を重視する企業との取引を優先する傾向も見られるため、ビジネス機会の拡大にもつながる可能性があります。
また、SDGsへの取り組みとして再生紙の利用を位置づけることで、持続可能な社会の実現に貢献する企業としてのブランド価値を高めることができるでしょう。
こちらの記事では、名刺ではじめるSDGsについて解説しています。 取り組みの例やロゴの印刷方法も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
再生紙のデメリット・課題
再生紙には多くのメリットがある一方で、導入時に検討すべきデメリットや課題も存在します。これらを正しく理解し、用途に応じた適切な使い分けを行うことが重要です。
耐久性が下がる
再生紙のもっとも指摘されるデメリットが「耐久性の低下」です。古紙をリサイクルする過程で紙の繊維が短くなり、結果として新品のパルプで作られた紙と比較して強度が劣る場合があります。
とくに、コピー機やプリンターでの使用時に紙詰まりが起こりやすくなったり、重要書類の長期保存には適さない場合があります。
ただし、現在では紙力剤(紙の強度向上剤)の添加により、従来の課題は大幅に改善されています。用途を選んで使用すれば、実用上の問題はほとんどない品質レベルに達している製品も多くあります。
品質が安定しにくい
再生紙の原料となる古紙は、種類や品質にばらつきがあるため、製品の品質を一定に保つことが困難な場合があります。印刷インクの除去が不完全だと斑点が残ったり、色むらが発生したりすることがあります。
また、古紙に含まれる異物の除去が不十分だと、印刷時のトラブルや仕上がりの不均一さの原因となります。とくに高品質な印刷物や精密な作業には適さない場合があるでしょう。
しかし、製造技術の向上により、選別や洗浄工程が高度化され、品質の安定性は着実に改善されています。用途に応じたグレードの選択により、必要な品質レベルを満たす製品を選ぶことが可能です。
通常の紙より製造コストがかかる
意外に思われるかもしれませんが、再生紙の製造には通常の紙よりも高いコストがかかる場合があります。古紙の収集・選別・洗浄・脱墨などの工程が必要で、これらの処理にかかる費用や設備投資が製品価格に反映されるためです。
とくに高品質な再生紙を製造する場合、徹底した異物除去や脱墨処理が必要となり、コストはさらに上昇します。また、古紙の市場価格の変動により、原料コストが不安定になることもあります。
ただし、長期的な視点で見れば、廃棄物処理費用の削減や企業イメージの向上による間接的な効果も考慮する必要があります。総合的なコスト・ベネフィット分析により判断することが重要です。
古紙の回収や輸送にコストがかかる
再生紙の製造には、まず古紙の回収・分別・輸送というプロセスが必要です。これらの工程にも相応のコストとエネルギーが必要となり、環境負荷軽減効果を部分的に相殺する場合があります。
とくに、古紙の品質を保つためには適切な分別が不可欠ですが、これには人手と時間がかかります。また、回収拠点から製紙工場までの輸送にも燃料費や人件費がかかり、これらのコストが最終的な製品価格に影響します。
効率的なリサイクルシステムの構築には、社会全体での取り組みが必要であり、個別企業の努力だけでは限界があるのが現状です。しかし、技術の進歩と制度の整備により、これらの課題は徐々に改善されています。
すべての紙を再生紙にできるわけではない
再生紙の原料として利用できる古紙には制限があり、すべての紙製品がリサイクル可能というわけではありません。これは「禁忌品」と呼ばれる、再生紙の製造工程で問題を引き起こす可能性のある紙が存在するためです。
代表的な禁忌品として、食品で汚れた紙(ピザの箱など)、感熱紙、レシート、圧着はがき、カーボン紙、ノーカーボン紙などがあります。これらの紙は、製紙工程で機械のトラブルを引き起こしたり、品質不良の原因となったりするため、古紙として回収されても再生紙の原料としては使用できません。
企業で古紙回収を行う際は、これらの禁忌品を事前に除去し、適切な分別を行うことが重要です。
再生紙の製造工程
再生紙がどのような工程を経て製造されるかを理解することで、その品質特性や環境効果をより深く理解できます。現代の再生紙製造は、5つの主要なステップで構成されています。
1:古紙をどろどろに溶かす
製造工程の最初のステップは、回収された古紙を水とともに大型のミキサー「パルパー」に投入し、どろどろの状態まで溶かすことです。
パルパーは直径数mの大型容器で、内部の回転翼により古紙と水を激しく攪拌します。
この段階で、紙の種類や汚れの程度に応じて、脱墨剤などの薬品が添加される場合もあります。これにより、後の工程で脱墨処理の効率を高められます。
2:異物を除去する
溶かされた古紙から、ホチキスやフィルムなどの異物を除去する工程です。スクリーンと呼ばれる装置を使用し、サイズや重量の違いを利用して異物を分離します。
これらの処理により、後工程での機械トラブルを防ぎ、最終製品の品質を向上できます。
3:原料をさらに細かくする
異物除去が完了した原料を、叩解機(こうかいき)という装置でさらに細かく処理します。この工程では、繊維の表面を毛羽立たせることで繊維同士の結合力を高め、強度のある紙を作るための準備を行います。
二枚の刃の間を通過する過程で繊維が細かく裁断され、紙の種類に応じた特性を備えたパルプ原料を作れます。
4:原料をシートにする
処理された原料を実際の紙のシート状に成形する工程です。抄紙機(しょうしき)と呼ばれる大型の機械により、液状の原料から水分を除去しながら薄いシート状に成形していきます。
この工程では、シートの厚さや密度、水分含有量などを精密に制御し、最終製品の品質を決定します。また、必要に応じて複数のシートを重ね合わせることで、所定の厚さの紙を製造することも可能です。
5:シートを乾燥させる
成形されたシートをドライヤーで乾燥させ、最終製品として完成させる工程です。大型の円筒形ドライヤーの表面にシートを接触させながら通過させることで、効率的に水分を除去します。
最終的に、乾燥が完了した紙は所定の幅にカットされ、ロール状に巻き取られるか、枚葉に裁断されて製品として出荷されます。この段階で品質検査も行われ、規格に適合した製品のみが市場に送り出されるのです。
再生紙は環境に悪い?通常の紙と使い分けることがエコにつながる!
近年では「再生紙は環境に悪い」という意見も一部で聞かれるようになりました。この議論の背景と、真に環境配慮型の紙利用のあり方について考えてみましょう。
再生紙が環境に悪いとされる理由
再生紙に対する批判的な見解の主な根拠は、製造工程でのエネルギー消費と環境負荷です。古紙の回収・輸送・処理には相応のエネルギーが必要で、脱墨処理では化学薬品も使用されます。
古紙の割合を増やし、なおかつ白色度の高い紙を仕上げようとすると、薬品やエネルギーの使用量が増え、結果的にコストや二酸化炭素排出がかさむという指摘があります。
その一面だけを取り上げると「再生紙は環境に悪い」といった誤解につながりますが、実際には用途や目的に応じた使い分けが重要であり、必ずしも再生紙が環境に悪いわけではありません。
用途に応じて通常の紙と使い分けることがエコ!
環境に配慮した紙の利用には、再生紙と通常の紙を用途に応じて適切に使い分けることが重要です。長期保存が必要な重要書類や高品質な印刷物には通常の紙を使用し、日常的な文書やメモ、梱包材などには再生紙を使用するという考え方です。
たとえば、社内での会議資料や連絡文書、下書き用紙などには再生紙を積極的に活用し、顧客向けの提案書や契約書、名刺などの重要度の高い印刷物には用途に応じた最適な紙を選択する方法が効果的です。
まとめ
再生紙は古紙をリサイクルして製造される環境配慮型の紙で、資源の有効活用や森林保護、企業イメージの向上といった多くのメリットを持つ一方、耐久性や品質の安定性、コスト面での課題も存在します。
重要なのは、これらの特性を理解した上で、用途に応じて通常の紙と適切に使い分けることです。日常的な社内文書や会議資料には再生紙を活用し、重要書類や高品質な印刷物には従来の紙を使用するといった使い分けにより、環境配慮と実用性を両立させることができます。
名刺の企画・制作をお考えの企業様には、環境配慮と品質を両立したプリントバーンをご利用ください。プリントバーンでは再生紙はもちろん、FSC®認証紙やLIMEXなど多様なエコ用紙をご用意し、お客様のご要望に合わせた最適な名刺づくりをサポートしております。
持続可能な社会を目指す取り組みの一環として、環境に配慮した名刺をぜひご活用ください。
プリントバーンは名刺発注フローを効率化し、 時間とコストをダブルでカットするWEB名刺発注システムです。 ぜひお気軽にご相談ください。



