
健康経営優良法人の認定を受けると、企業が従業員の健康に積極的に取り組んでいることを社内外にアピールできるようになります。企業価値の向上や従業員の健康維持にとどまらず、企業の業績改善や人材の定着に大きな効果をもたらしてくれるでしょう。
本記事では、企業が従業員の健康改善に取り組むことで得られるメリットや、認定を受けるべき企業の特徴について解説しています。具体的な事例を交えながら紹介しているため、健康経営の取り組みが企業の成長にどう役立つのかについて理解を深められます。
健康経営優良法人のメリット
健康経営優良法人の認定は、企業が従業員の健康に真剣に取り組んでいることを示す証です。認定を受けることで、社会的な評価が高まるだけでなく、従業員の健康維持や業績向上につながります。以下で、健康経営優良法人の特徴やメリットについて紹介します。
健康経営優良法人制度について
健康経営優良法人制度は、経済産業省が2016年度に開始した制度です。企業が従業員の健康に配慮する取り組みを内外部に公表することで、社会的な評価を得ることを目的にしています。
認定された企業は、経済産業省や地方自治体などから表彰されるほか、保険料の割引や助成金の優遇措置が受けられます。また認定のロゴマークを、PR活動に活用できるのもメリットといえるでしょう。
健康経営は、特定非営利活動法人健康経営研究会が提唱した言葉です。企業が従業員の健康を重視することは、経営面でも大きな成果を生むという考え方です。健康管理を経営戦略の一環として進めることで、生産性向上や企業イメージの向上、リスクマネジメントなど多岐にわたる効果が期待できます。
認定は「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2つに分かれており、それぞれの規模に応じて評価基準が異なるのが特徴です。部門別にとくに優れた上位500社は「ホワイト500」(大規模法人部門)や「ブライト500」(中小規模法人部門)として表彰されます。
従業員が健康で活力を持って働ける環境を提供することは、地域社会や業界内での地位向上にもつながります。そのため、この制度の認定を受ける企業は、年々右肩上がりに増えているのです。
6つのメリット
健康経営優良法人に認定されることで得られるメリットは以下の6つです。
・生産性が向上する
・採用が有利になりやすい
・企業イメージが向上しやすい
・助成金が利用できる
・離職率の低下が期待できる
・名刺に載せられる
順に詳しく説明します。
生産性が向上する
健康経営優良法人制度の認定を受けることで、企業は生産性の向上が期待できます。この制度では、従業員の健康をサポートするさまざまな取り組みが推奨されています。
たとえば、食生活の改善指導や運動不足解消のためのスポーツイベントの開催、社内ジムの設置、ランチミーティングを通じたコミュニケーション促進などです。
健康経営の取り組みによって、従業員のストレスが軽減され、体力の向上が期待できます。健康な従業員は心身に余裕が生まれるため、集中力が高まり、仕事へのモチベーションも維持しやすくなります。
結果として、業務を円滑に進められるため、チーム全体のパフォーマンスも向上するでしょう。
採用が有利になりやすい
認定を受けた企業は、採用活動で有利になることが多いです。近年の若年層は、企業の知名度や規模、給与だけでなく、働く環境を重視しています。
ブラック企業や職場のハラスメントに敏感であり、安定した雇用や給与が重要である一方、社員が疲弊するような職場は避けたいと考えています。そのため、従業員の健康や働き方に配慮し、福利厚生が充実している企業が求職者にとって魅力的に映るでしょう。
健康経営優良法人の認定を受けると、その証であるロゴマークを取得でき、ホームページや求人広告、ハローワークの求人票などに掲載が可能です。さらに、経済産業省や自治体の公式サイトにも社名が掲載され、健康に配慮した企業としての認知度や信頼性が向上します。
健康的な職場環境を重視する求職者に、企業の魅力をアピールしやすくなるため、応募者数の増加が期待できるでしょう。
企業イメージが向上しやすい
認定を受けると、企業イメージが向上しやすいというメリットがあります。従業員の健康管理が適切に行われている=信頼できる企業として認知されるからです。
従業員や求職者、関係企業、取引先から「従業員の健康を大切にし、それを経営戦略に取り入れている会社」として高く評価されます。同業他社に対しても競争優位性を持てるため、将来的には健康経営優良法人であることが、取引先に選ばれる条件のひとつになるかもしれません。
さらに、健康経営は、企業の広報活動にも大きく役立ちます。自社の健康経営の取り組みをホームページやパンフレットで積極的に発信することで、企業イメージの向上が期待できます。もしメディアに取り上げられる機会があれば、従業員や取引先、地域社会からの評価も高まるでしょう。
助成金が利用できる
健康経営には、初期投資が少なく始められる取り組みもありますが、福利厚生の充実や健康関連設備の投資など、一定の費用がかかることもあります。費用負担が大きい場合は、助成金の活用を検討してみましょう。以下は、健康経営を進める際に利用で
きる主な助成金です。
・働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)
・受動喫煙防止対策助成金
・両立支援等助成金
働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)は、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の休息を設ける取り組みに対して助成されます。助成額は最大580万円です。
受動喫煙防止対策助成金は、一定基準を満たした喫煙専用室の設置にかかる費用に対して助成が行われます。助成額は最大100万円です。
両立支援等助成金は、従業員が育児や介護をしながら働くための支援を目的としています。具体的には、育児休業や介護休暇を取りやすくする制度の導入や、フレックスタイム制度、在宅勤務制度の整備などがあります。
離職率の低下が期待できる
健康経営の取り組みを通じて、従業員の離職率の低下が期待できます。離職の原因はさまざまですが、主に病気や家族の介護、長時間労働、職場環境の悪化などが考えられます。
とくに、過度な労働やストレスの多い環境は、従業員が働きにくいと感じる大きな原因のひとつです。健康経営を進めることで、従業員が心身ともに健康を維持しやすくなり、職場に対する満足度や安心感が向上するでしょう。
名刺に載せられる
健康経営優良法人のロゴマークは、名刺に載せられます。認定されている法人であれば、ロゴマークの記載を申請する必要はないため、任意のタイミングで名刺の更新が可能です。
ロゴマークが名刺に記載されていると、取引先の企業へ名刺を渡す際、従業員の健康や働き方に気を配っている会社であると認識され、高い評価が期待できます。ただし、企業のサービス品質を保証・担保する目的の使用は禁止されているため、注意してください。
また、ロゴマークの使用には期限が設けられており、認定時に付与されるロゴマークの西暦年度と決められています。使用期限の年度が過ぎてしまった場合は、再度認定を受けて新しく付与されるロゴマークを名刺に記載しましょう。すでに印刷済みの名刺については、使い切るまで使用可能です。
健康経営優良法人のデメリット
多くのメリットがある健康経営優良法人ですが、取り組む際にはいくつかの課題も存在しています。以下で、健康経営優良法人のデメリットについて詳しく解説します。
効果はすぐに実感できない
健康経営は中長期的な取り組みが求められるため、効果はすぐに実感できるわけではありません。
企業は毎年課題に取り組み、その成果をもとに改善を重ねていくプロセスが求められます。健康の向上や業績アップといった効果は、徐々に現れるため、従業員からすぐに理解を得られない場合もあるでしょう。
評価されにくい取り組みを成功させるためには、小さな成功体験を積み重ねることが大切です。大企業の事例をそのまま真似するのではなく、自社に合った方法で、小さなステップから始めていきましょう。
また、突然「健康セミナーに参加してほしい」「ノー残業デーを導入する」と発表するだけでは、取り組みが形骸化するリスクがあります。なぜその取り組みを行うのか、目的や意図を説明し、従業員の理解を得ることが重要です。
数値化して効果を確認しにくい
健康経営では、企業の課題を深く理解し、その解決策を考え、目標を立てて実行することが求められます。しかし、効果を数値で正確に把握するのは簡単ではありません。
たとえば、メンタルヘルスケアの改善やワークライフバランスの向上によって離職率を下げようとする場合、その成果が企業の取り組みだけで達成されたかを判断するのは難しいでしょう。職場環境だけでなく、従業員の家庭状況、経済的な要因など、さまざまな要素が影響してくるためです。
そのため、数値データだけに頼るのではなく、アンケートやインタビューなどの方法を併用し、効果を多面的に評価することが重要です。
社内浸透に時間がかかりやすい
健康経営を社内に浸透させるには、時間がかかります。取り組みを進めるためには、従業員の理解と協力が必要ですが、業務の合間に健康経営を優先するのは難しい場合があります。
また通常業務に加えて、新たな取り組みを始めるのは手間と感じられ、後回しにされる可能性もあるでしょう。なかには「社長が言うから仕方なく参加している」という方もいます。また、新しい取り組みには、ある程度のストレスがともなうことも注意しましょう。
頻繁にコミュニケーションを取る、またはアンケートを実施するなどして、従業員の声を反映させることが重要です。従業員にとってメリットのある内容から導入することで、理解と協力を得やすくなります。
申請に手続きや手間がかかる
健康経営優良法人の申請には、手続きが必要となるため、手間や時間がかかるのもデメリットといえるでしょう。更新制度がないため、毎年新たに申請を行わなければなりません。
また健康経営に関する取り組みが不十分な企業は、準備しなければならないことが多くなります。運動器具の購入、健康管理システムの導入など、社内環境を整える必要があるでしょう。
申請手続きに不安がある場合や手間を減らしたい場合は、専門家のアドバイスを受けるのも選択肢のひとつです。
健康経営優良法人の認定を受けるべき企業
健康経営は将来への投資ともいえますが、リソースの不足や日々の業務の忙しさから、取り組む余裕がない企業もあるでしょう。しかし、健康経営を推進することで得られる効果は少なくありません。
ここでは、健康経営優良法人の認定を受けるべき企業や、その効果について詳しく紹介します。
従業員の平均年齢が高い
従業員の平均年齢が高い企業にとって、健康経営の推進は大きな効果をもたらします。高齢化が進むなか、企業は従業員の健康リスクにどう対応するかが重要な課題となっています。
とくに高齢従業員は、転倒や腰痛、転落などの労働災害や、生活習慣病のリスクが高いため、対策が急務です。
健康経営優良法人の認定を受けることで、企業は高齢従業員の健康を守るための取り組みをより効果的に実施できます。たとえば、次のような施策が従業員の健康維持に役立ちます。
・スマートフォンアプリや歩数計を活用し、歩数を競うイベントの開催
・仕事の合間に行える短時間のヨガやストレッチの導入
・オンラインで参加できるバーチャルイベントの開催
・定期的に集まりランニングを行うクラブ活動
・残業時間の削減
・生活習慣病リスクが高い従業員へのサポート
・社員食堂で健康に配慮したメニューの提供
これらの施策を通じて、定期的な運動やストレスケアを促進することで、従業員の健康状態を維持・改善し、疾病リスクの軽減も期待できます。また、労働災害や病気による離職リスクの低減にもつながります。
長時間の労働が発生することが多い
長時間労働が発生しやすい企業では、従業員の幸福度や生産性が低下しやすくなります。過度な疲労が蓄積すると、仕事の効率が悪化し、従業員のモチベーションも低下するリスクがあります。このような状況を改善するためには、健康経営を推進することが効果的です。
以下のような施策を導入することで、従業員の健康を守り、長時間労働による負担を軽減できるでしょう。
・タイムカードやICカードなどによる労働時間の可視化・管理
・必要な人員を増やして、ひとりあたりの負担を軽減する
・フレックスタイム制度や短時間勤務制度の導入
・リモートワークを活用し、通勤の負担を減らす
これらの対策を通じて、従業員の労働時間を正確に把握し、残業の削減や勤務時間の適正化を進められます。また、従業員が自分の生活リズムに合った働き方を選べるようにすることで、長時間労働によるストレスや疲労を和らげられるでしょう。
長期休業者が複数人いる
長期休業者が複数人いる企業では、健康経営を推進することで、従業員の健康問題を早期に発見でき、適切な対策を立てられます。深刻な健康問題に進展する前に、短期的な治療やリハビリを行うことで、突然の入院や長期休業を避けられるからです。
定期的な健康診断やストレスチェックを実施し、その結果に基づいたフォローアップを行いましょう。健康状態に異常が見つかった場合、早期対応することで長期的な健康問題を防げます。
とくに従業員が健康や仕事に関する悩みを抱えている場合、その問題が見過ごされると長期休業につながりやすくなるため、早期発見が重要となります。
1on1ミーティングの実施や、ハラスメントに関する研修、相談窓口を整備することで、従業員の悩みに早めに対応できる仕組みを作りましょう。同時に、長期休業後の従業員が円滑に職場復帰できるよう、リハビリ勤務や復職サポートプログラムの導入も重要となります。
離職者が増えている
離職者が増えている企業も、健康経営優良法人認定を受けることで大きな効果が期待できます。離職者が増加する主な要因としては、過重労働や職場内のコミュニケーション不足、さらに育児や介護といったライフイベントとの両立が難しいことが挙げられます。
問題を解決するためには、長時間労働の削減や業務量の適正化、ワークライフバランスの見直し、誰もが意見を言いやすい職場環境の整備が必要です。
従業員が働きやすい環境を整えることで、仕事への満足度が向上し、個々の成長意欲も高まります。自己の価値を高めることで、企業の生産性も向上し、結果的に組織全体が発展する好循環を生み出せます。
従業員ストレスチェックの結果がよくない
従業員のストレスチェックの結果が思わしくない企業は、健康経営を推進することで、ストレス軽減が期待できます。
ストレスが高まると、作業効率の低下やミスの増加、企業イメージの悪化、帰属意識の低下、さらには離職者の増加といった問題が連鎖的に発生する可能性があります。こうした負のスパイラルが起こると、会社全体が疲弊してしまいかねません。
企業がこうした問題に対処するためには、健康経営の取り組みが有効です。以下のような施策を検討してみてください。
・ランチミーティングでリラックスした雰囲気のなか、自由に意見交換する
・オンライン座談会を通じて、業務外でのカジュアルな交流を促進する
・オフィスにオープンスペースやコミュニケーションエリアを設置する
・メンタルヘルス研修を実施する
・マッサージチェアや仮眠スペースを設置し、短時間でリフレッシュできる環境を整備する
ストレスを軽減するためには、従業員同士がリラックスして交流できる機会を設けることが大切です。自由にコミュニケーションが取れる場を提供することが、社内の活気や協力体制を強化します。
こちらの記事では、健康優良法人とホワイト500の違いについて解説しています。ホワイト500と健康優良法人の認定基準や対象となる法人の違いについても掲載しているため、あわせてご覧ください。
まとめ
健康な従業員は、企業の成長を支える大切な存在です。生産年齢人口の減少や雇用の流動化が進むなか、健康で優秀な人材が企業の価値を大きく左右する時代が来ています。
健康経営に取り組むことで、優秀な人材の確保や離職率の低下、従業員の高齢化対策など、多くのメリットを得られます。また「健康経営優良法人認定」のロゴマークを活用すれば、企業の信頼性や社会的評価をさらに高め、取引先や顧客にも健康経営への姿勢をアピールできるでしょう。
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